今回は、訪問介護のヘルパーが特におさえておくべき緊急時の対応の基礎中の基礎について書いていきたいと思います。
基本的な緊急時の対応を知りたい!!
急変時の観察ポイントを学びたい!!
そのようなあなたに向けて、記事を書いています!!
参考文献
・早引き介護の急変時対応ハンドブック 生命の危機に直結するような緊急時や、症状の急変時、 [ 佐々木静枝 ]
・介護職のための今すぐ知りたい医療行為実技ガイド 吸引・経管栄養 緊急時トラブル対応・誤嚥・心肺蘇生・リスクマネジメント チェックリスト4種付き/服部万里子【合計3000円以上で送料無料】
できる介護職を目指すなら最低限押さえておきたい必読書4冊!!
①のほほん解剖生理学 [ 玉先生 ]
・体の仕組みについて、漫画で分かりやすく解説している介護職の必読書!!
②介護で使える!「医行為でない行為」がすぐできるイラスト学習帳 [ 服部万里子 ]
・イラストで解説。医行為でない行為が判別できるようになるサ責の必読書!!
③ユマニチュード入門 [ 本田美和子 ]
・認知症の方を含めた介護の基本中の基本が学べる介護職の必読書!!
④認知症世界の歩き方 [ 筧 裕介 ]
・認知症の方の世界の見え方を理解し、現場で生かせること間違いない良書!!
さまざまな疾患を持っている高齢の利用者を相手にしている以上、避けては通れない緊急時の対応。
施設であれば、すぐに助けを呼んで複数人で協力することが出来ますが、訪問介護では、すぐに助けがくるとは限りません。
緊急時の対応をヘルパーが一人で行わなければいけない場面が出てきます。
そんな時に、慌てないために、基本的な知識や対応方法を学んでおけば、いざという時に落ち着いて対応することができます。
緊急時の対応の基礎を確認しておきましょう。
おさえておきたい10の観察のポイント
①声掛けに対して反応があるか?
・声を出すか?
・うなずくか?
・手を握り返すか?
・目を開けるか?
②呼吸はしているか?
・胸や腹が上下に動いているか?
・顔を近づけて頬で息を感じるか?
・呼吸音が聞こえるか?
③顔色に変化はあるか?
・顔が赤みを帯びているか?
・顔色が悪いか?
・チアノーゼが出ているか?
●普段の顔色との違いを確認する
④バイタルは正常の範囲内か?
・体温
・血圧
・脈拍
⑤外傷はないか?
・傷や打撲痕があるかないか?
・赤みや熱が帯びてないか?
⑥出血はないか?
・出血部位は?
・傷口の大きさや深さはどうか?
・痛みの有無は?
⑦嘔吐・吐き気はないか?
・いつ何を食べたか?
・同時期に同じ症状を訴える人はいないか?
⑧悪寒・冷や汗・震えはないか?
・熱があるかないか?
・糖尿病の場合は、低血糖症状の場合があるので、食事時間や摂取量などを確認する
⑨痙攣はないか?
・意識があるか、ないか?
・痙攣は部分的か、全身か?
・どれくらいの時間続いているのか?
➉痺れはないか?
・どの部位がどのようにしびれるのか?
緊急時の対応の手順・救急車を呼ぶ際の注意点
【緊急時の対応の手順】
【救急車を呼ぶ際の注意点】
※携帯電話からの通報の場合は、通報地点を管轄しない消防本部につながることがあります(携帯電話からの通報が大きな消防本部に集約してつながるようになっているため)。
通報地点を管轄しない消防本部につながった場合は、管轄の消防本部へ転送が行われるため、対応に時間がかかる場合があります。
利用者宅からの通報の場合は、利用者宅の電話を使わせてもらうと良いでしょう。
外出先からの通報の場合は、なるべく公衆電話や一般電話を利用しましょう。
【救急車の呼び方】
①局番なしの「119番」に電話をかける(携帯電話、固定電話ともに)
②電話がつながると「火事ですか?」「救急ですか?」と聞かれるので、「救急です」と答える
③「住所はどこですか?」と尋ねられるので、利用者の住所・名前・年齢・性別・電話番号の目印になる建物を伝える
④「どのような状態ですか?」と聞かれるので、見たままの状態を伝える
(いつ、どこで、誰が、どのようにして、どうなった)
消防庁・救急車利用マニュアルも参考にしてください
救急搬送時に持っていったほうが良いもの(診察券、医療保険証と介護保険証、お薬手帳等)についても詳しく書いてあります。
救急車が到着するまでの間に「何をしておくべきか」指示を受けます。
家族ではなく、ヘルパーであることと、自分の名前を伝えてください。
急変時の対処法
【1】意識がない
1:呼吸・脈拍を確認する・・・呼吸をしているか、心臓は動いているか確認
2:気道を確保する・・・利用者さんを仰向けにする
3:人工呼吸を行う・・・気道をしっかり確保した状態で行う
※感染予防のため、専用のマウスピースを使用するとよい
※感染の恐れがある場合、人工呼吸は省略する
・胸部が盛り上がる場合は成功
肺にしっかり空気が入っている
・腹部が膨らむ場合は不成功
気道確保ができていないため、再度、気道確保してから、人工呼吸を行う
4:心臓マッサージ(胸骨圧迫)を行う・・・気道を確保した状態で行う
・乳頭と乳頭の間の胸骨上に両手を重ねて当てる
・肘を伸ばし、胸骨に垂直に腕が沈み込むように圧迫する
(圧迫の強さは胸が5㎝沈む程度。1分間に100回のテンポで30回圧迫したら、人工呼吸を2回を1セット行う。呼吸が回復するか、救急隊が到着するまで繰り返す)
5:AEDを使用する・・・突然の心停止の原因となる「心室細動」の状態になった時に使用する。「心室細動」かどうかはAEDが判断してくれるので、近くにあれば、必ず使用する。
AEDのアナウンスの通りに対応し、
「心室細動」であれば、電気ショックが必要と判断するので、AEDの使用と心臓マッサージを続ける
そうでなければ、AEDが、心臓マッサージをするようにアナウンス(AEDは使用しないで心臓マッサージのみするように)してくれるので、心臓マッサージを再開する
【2】誤嚥
◆状態を確認する:顔色が真っ赤、または真っ青、声が出せないなどの誤嚥のサインがあるか確認する
1:指で取り出す
体を横向きにし、ヘルパーはディスポ―ザル手袋を着用し、人差し指にガーゼやハンカチなどの布を巻いて取り出す
2:ハイムリック法を行う
【立っている、座っている場合】
下記イラスト参照
【寝ている場合】
体を仰向けにし、両わき腹にヘルパーの手を置き、胸部を急に強く引き絞るように圧迫を加える
3:背部叩打法を行う
【立っている、座っている場合】
下記イラスト参照
【寝ている場合】
体を横向きにし、ヘルパーは利用者の胸を上腹部を大腿部で支え、左右の肩甲骨の間をたたく
【3】出血
◆人間は約1/3の血液を急激に失うと命の危険がある
①傷口を心臓より高くする
②ガーゼやタオルなど清潔で厚みがあり、出血部位を十分に覆うことができるものを当てる
③出血が止まるまで圧迫する
※感染予防のため、ゴム手袋やビニール手袋で手を覆う
【4】やけど
◆直後の対応が重要なので、患部を素早く冷やす
衣類を着ている場合は、衣類の上から流水で冷やす
無理に衣類を脱がすと皮膚が剥離することがあるので、注意が必要
患部に直接流水を当てるのではなく、洗面器などに水を流して患部を浸けたり、タオルなどで患部を保護して冷やす
もしもの時に慌てないために
緊急事態が発生した時に、素早く適切に対応できるようにするには、日頃からの備えが大切です。
事前に予測される状況を考えて、シュミレーションしておいたり、連絡体制を確認することでしっかり準備しておきましょう。
【1】利用者の既往歴を確認しておく
●現在、どんな病気にかかっているか
●既往歴
●内服薬
【2】緊急時の連絡体制
●家族やかかりつけ医の連絡先(まずどこに連絡するか、あらかじめ確認しておく)
●意識がない時、意識がある時など、救急搬送するか、医療職に連絡をとるか等、状況によって連絡先が異なる場合は確認が必要
知っていると役立つ豆知識
緊急時に知っていると役に立つ医療的知識として、次のことも知っておくと、いざという時に使えるかもしれません。
JSC(ジャバン・コーマ・スケール)
日本で使われている意識障害の程度(意識レベル)を評価するための指標のことです。
3-3-9度方式も言われます。
意識レベルを大きくⅠ・Ⅱ・Ⅲの3段階に分け、それぞれの状態を3つに分類します。
Ⅰ 刺激しないでも覚醒している状態
1:意識清明とはいえない
2:見当識障害がある
3:自分の名前・生年月日が言えない
Ⅱ 刺激すると覚醒する状態
10:普通の呼びかけで容易に開眼する
20:大きな声または体を揺さぶることにより開眼する
30:痛みや刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すとかろうじて開眼する
Ⅲ 刺激しても覚醒しない状態
100:痛みや刺激に対し、払いのけるような動作をする
200:痛みや刺激で少し手を動かしたり顔をしかめる
300:痛みや刺激に全く反応しない
統一した指標を使うことで、医師や看護師、救急隊員などの医療職との情報共有が正しくスムーズに行えます。
トリアージ
治療の優先順位を決めるときに使われる指標です。
地震や災害の現場では、人や物資は限らています。
そこで重症度に応じて、識別色の札を患者の手首などにつけて、ひと目で判断できるように、優先順位を決めて治療を進めていきます。
1:赤:最優先治療群(重症群) 生命を救うため、直ちに処置を必要とするもの
2:黄:待機的治療群(中等症群) 多少治療の時間が遅れても、生命に危険はないもの
3:緑:保留群(軽症群) 赤、黄の状態よりも軽い傷病で、ほとんど専門医の治療を必要としないもの
4:黒:無呼吸群(死亡群) 呼吸がない、すでに死亡している、心肺蘇生をしても蘇生の可能性がないもの
最後に
もしもの時に慌てないために、緊急時の対応の基礎を紹介していきましたが、読んでみて「そうなんだ」では終わらせずに、自分が担当している利用者の病気や状況によって対応方法は違うので、個別にシュミレーションをすることをお勧めします。
いざという状況がないに越したことはありませんが、いつあるとも限りません。
心の準備、対応方法の準備をしておくことで、スムーズに対応ができると思います。
また、まわりに助けを呼ぶことも大事です。
自分一人で抱え込まず、助けを呼びましょう!!
ヘルパーの初期対応次第で、その後の利用者さんの生活が左右されることもありますので、責任は重いですが、しっかりとした対応ができるようなヘルパーになりましょう。
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