最近、訪問介護の現場でも透析をされている方のケアに行く機会が増えてきました。
ケアの内容は、透析の病院への送り出しの準備、病院へ車椅子での送迎、透析食を作る等です。
ヘルパーとして、透析されている方に話を伺うと、
もう少し、食生活に気を付けていれば良かった・・・
病気になる前に戻りたい・・・
など、後悔の言葉を聞くことが多いです。
そんな方たちの大変さ、苦労を少しでも理解できればと、人工透析について書いていきます。
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腎臓とは・腎臓の働き
【腎臓とは】
背中側の腰の高さに左右1個ずつある臓器(こぶし大の大きさ)で血液中の老廃物をろ過して、尿を作ります。
腎臓には、心臓が1回の拍動で送り出す血液の1/4が送り込まれ、約150~180ℓもの尿のもと(原尿)が作られ、ろ過が繰り返されます。
そうして最終的に1.5ℓまで減って尿として排出されます。
【腎臓の働き】
①尿を作り出す。
②血圧を調整する。(血圧を上げる物質と下げる物質の両方を作り出す)
③赤血球を作る。
④カルシウムの吸収を増加させるビタミンD3を活性化する。
腎不全とは
さまざまな原因により、腎臓の機能が不十分になった状態を腎不全と言います。
腎不全には、急激に腎機能が低下する
①急性腎不全
②慢性腎不全 (長年に渡って徐々に機能が低下する)
の2種類があります。
①急性腎不全は、早急に適切な治療を行うことで大部分の機能回復が見込めます。
②慢性腎不全は腎機能がある程度まで低下しないと自覚症状が現れず、早期発見が大変難しい病気です。
一度失った腎機能の回復は困難です。
腎臓の機能が低下すると、本来、尿として出るべき老廃物が体に溜まります。
症状は様々ですが、尿の異常、部分的なむくみや高血圧になることもあります。
慢性腎不全末期になると「尿毒症」となり、重篤な場合は、全身けいれんなどの症状が現れます。
末期の治療法は、腎移植や透析療法に限られてきます。
人工透析とは
腎臓の機能が10%以下になると、血液のろ過が行えず、水分や老廃物のコントロールができなくなってきてしまいます。
そのような場合に、人工的に血液の浄化を行うことを言います。
①血液透析
血液透析器(ダイアライザー)を通して、血液を体内から取り出し、血液中の老廃物や余分な水分を取り除き、浄化された血液を体内に戻す方法です。
血液を体外に取り出すために、腕の静脈と動脈をつなぎ合わせる手術(シャント作成)が必要です。
②腹膜透析
お腹の中に透析液を入れ、体内で血液を浄化する方法です。
透析液を出し入れするためにカテーテルと呼ばれるチューブを腹部に埋め込む手術が必要です。
透析にかかる費用
1か月の透析治療の医療費は、患者一人につき外来の血液透析では約40万、腹膜透析では、30~50万円程度必要と言われています。
このように透析治療の医療費は高額ですが、患者の経済的な負担が軽減される公的助成制度が確立しています。透析患者は、必要な手続きをすることで次のような制度を利用することができます。
医療保険の長期高額疾病(特定疾病)
高額療養費の特例として(一般の高額療養費とは異なる)により保険給付され、透析治療費の自己負担額は、1か月1万円が上限となります。(一定以上の所得のある人は2万円が上限となります。外来・入院・薬局等、それぞれでの負担となります。入院時の食事代は自己負担です。)
手続き方法
特定疾病療養受療証交付申請証に医師が記載・捺印の上、加入している保険者(健康保険組合、健康保険協会、共済組合、市町村健康保険課)や後期高齢者広域連合の窓口で申請し、「特定疾病療養受療証」の交付を受けます。
全腎協サイトより引用
透析の方の平均余命
例えば、50歳の方の平均余命は、男性で14.6年、女性で16.7年、60歳の透析患者さんの平均余命は、男性で9.9年、女性で11.3年となっています。一般人に比べ、透析患者さんの余命は、約半分程度と言われています。
腎援隊より引用
ただし、余命には個人差があり、長期間、透析を続けながら生活されている患者さんも少なくありません。2016年末時点で30年以上透析を続けていた患者さんは、全国で約7,000人いらっしゃいました。現在は透析医療も進歩しており、治療成績が向上している可能性もあります。
もう1つの代替医療である腎移植は、一般的に透析療法よりも生命予後が良いとされています。
腎援隊より引用
こちらはアメリカのデータですが、どの年代においても腎移植の方が透析患者よりも平均余命は長くなっています。
移植医療が進歩した現在では、腎移植を受ける患者さんと腎提供を行うドナーの血液型が異なっていても移植はできますし、70代や80代で腎移植を受ける方もいらっしゃいます。
腎援隊より引用
透析食について
【 透析食のポイント】
(1)水分の制限
(2)塩分を控える
(3)カリウムの制限
(4)リンの制限
(5)適切なエネルギー・良質なたんぱく質をとる
(1)水分の制限
腎不全になると尿が出なくなり、体の中に水分がたまります。
水分を取りすぎると、むくみ・体重増加・呼吸困難・血圧上昇などの症状が現れ、高血圧、心不全、肺水腫などの原因になります。
◎食事についての工夫
・水分の多い料理(鍋物、汁物、麺など)を控えめにする。
・調理方法を工夫する。(焼き物、揚げ物、炒め物をとりいれる)
・主食も一食はパンかおもちにする。
※食事中の水分は、1日1000CC程度※
◎飲み水についての工夫
・氷をなめる。
・お茶を熱くして少量にする。
・湯呑茶碗、コップを小さくする
◎乾き物には注意
わかめ、ひじき、麺類などの乾き物は戻して使用しますが、膨らんだ分は水分です。
戻したものを量り、8~9割が水分と思ってください。
◎その他水分とみなされるもの
・醤油・酒・みりん・酢・ソース・ケチャップなどの調味料。
・こんにゃく、ところてん、寒天、ゼリーなど。
とりすぎないようにしましょう!!
(2)塩分をひかえる
塩分をとりすぎると、のどが渇き、水を飲んでしまうために、むくみが大変ひどくなります。
塩分の制限が水分の制限につながります。
患者さんの状態によって1日の塩分量が決められますので、調味料や食塩の塩分量を覚えて無理のない減塩食を心がけましょう。
◎味にメリハリをつける
・1~2品に塩分を多めに使用し、他は薄味にすると食べやすくなります。
塩分がないとおいしくない料理に集中して使いましょう。
◎醤油や塩などの調味料を控える工夫
・香味野菜を使用する。(ねぎ、しそ、しょうが、にんにくなど)
・香辛料を使用する。(ごまや山椒、カレー粉、唐辛子など)
・香りや酸味を利用する。(レモン、ゆず、すだち)
・煮汁鰹節でとっただしを利用する。
◎「かける」より「つける」
・醤油やソースは小皿に入れ、つけながら食べましょう。
◎練製品、加工食品は避ける
・竹輪、かまぼこ、ハム、ソーセージ、干物など
◎外食時の注意
・自分で塩分調節ができるメニュー(単品より定食もの)を選びましょう。
小袋タイプの減塩調理料を持ち歩くのも一つの方法です。
◎塩分の入っている調味料は軽量スプーンの大さじ、小さじを使って量る習慣をつけましょう!!
塩1gに相当する調味料の量
(3)カリウムの制限
カリウムは人間の中にも、食べ物の中にもほとんど含まれています。
腎臓が悪くなると、余分なカリウムを尿中に捨てることができなくなるため、高カリウム血症をおこし、不整脈や心臓を止めてしまう危険性があります。
食事の中でのカリウムをできるだけ少なくする工夫が必要です。
◎野菜は1日200gを目安に
・カリウムは、水に溶ける性質があるので、野菜は水にさらすかゆでこぼしてから調理しましょう。
それでもカリウムをすべて除去できるわけではありません。
・とりすぎに注意しましょう。
◎果物やイモ類は1日50gを目安に
・特にカリウムの多いバナナ、メロン、キウイは控えてください。
◎缶詰のシロップは飲まない
・シロップ中にカリウムが溶け出しています。
(4)リンの制限
血液中のリン値が上がると、関節や血管に石灰化がおこったり、心筋梗塞や脳梗塞などが起こります。
リンは、たんぱく質の代謝産物であり、必要量のたんぱく質を摂ろうとするとリンの値も高くなってしまいます。
たんぱく質を低下させないように食品を置き換える工夫が必要です。
◎インスタント食品を控える
・リンはほとんどの食品に含まれますが、特にたんぱく質の多い食品やインスタント食品に利用される食品添加物の中に多く含まれています。
◎低リン食品を利用する
・低リンミルク、だしわり醤油、たんぱく調整食品など、一般市販品に比べてリン含有量が1/3~1/5以下となるように調整されている食品があります。
◎たんぱく質の過剰摂取を避ける
・たんぱく質の摂取量が制限内であっても、リン含有量の多い食品に偏ったり、お菓子などをたくさんとれば、リンの摂取量は増えしまいます。
リン含有量の多い食品をチェックしておきましょう。
(5)適切なエネルギー・良質なたんぱく質をとる
透析患者さんは、貧血になりやすい傾向があります。
食べ物を十分にとり、血が薄くなるのを防がなくてはなりません。
体に力を与える食べ物(ごはん、パン、砂糖、油)と、血の材料になるたんぱく質(卵、肉、魚、大豆製品)を適切に摂り、エネルギーが不足しないように献立や調理方法を工夫しましょう。
最後に
人工透析になってしまうと、週3回の半日程度が人工透析に費やされ、QOLが下がってしまいます。
透析が終わった後は、何もできないくらいの疲労感に襲われる方もいらしゃるようです。
人工透析について知識を深めることで、人工透析をされている方のケアをする際、「あぁ、この方は大変な思いをされてるのだな」「頑張っているのだな」といつもより優しく接することができると思います。
是非、明日から優しい気持ちで接してみてください。
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